【地方銀行の未来】地域金融力強化プラン成功の鍵:人的資本の再構築と現場改革への提言
地方銀行の「新しい働き方」が地域経済と銀行自身の未来を切り開く
【記事の論点】
地域金融力強化プランの成功には「人的資本の再構築」が最重要。
現場のKPI構造を変えなければ政策は"魂入らず"で終わる。
地方銀行は今こそ「顧客課題解決・地域活性化業務」へ転換する好機。
地域金融力強化プランが直面する「現場の現実」:政策への提言
現在、金融庁では、「地域金融力強化プラン」を通じた地域金融機関の政策運営の方向性が、ワーキンググループをもうけて議論されています。
日本全国で人口減少問題による地域の持続可能性と、地域金融機関の経営安定化を図ることが喫緊の課題になっており、政策指針の策定は歓迎すべきことです。
金融庁の理想と地方銀行現場のギャップ
しかし、「地域金融力強化プラン」を実践するにあたり懸念点があります。それは現状の現場運営が、資金関連業務や保険・証券の獲得業務中心の営業スタイルになっていることです。
地方銀行の現場課題:KPI偏重による「負のスパイラル」とは
営業目標の数字を獲得することにKPIが置かれており、顧客課題にアプローチすることに目が向かない仕組みになっていると思います。
どうしても地域金融機関の現場の目標設定は、融資や、保険・証券の獲得、手数料収益の獲得を中心とした目標設定になってしまいます。
支店の営業人数に、獲得目標が人数割りで振られており、顧客課題を接点にするという発想が乏しい感じがします。
生産性の低い業務が現場行員の離職率を高める構造
一部の優秀な担当者であれば、お客様の課題解決を図りながら、融資や保険・証券の業務もこなせると思いますが、組織全体で一貫してお客様に同様の対応ができるかというと難しいのが現実ではないでしょうか。
このようなことが起こる原因として、現場に対する総花的な営業目標の設定と業務スタイルで、何に注力して良いかということが明確になってないのではないかと思います。
例えば期の後半になると、収益目標が達成していないからといって、生産性の低い営業目標にも注力するといったことが起こるのです。
「何を優先したらいいのかわからない」
「結局、数字が足りないと全ての業務を『やれ』になる」
以前は、融資を中心として、資金関連業務や証券・保険の獲得といった仕事が中心でした。しかし現在は、そこにコンサルティング業務や地域活性化業務が加わっています。
資金獲得業務を中心とした組織体制になったままで、新しいコンサルティングや地域活性化業務に合った営業の仕組みになっていないことが問題です。
今は生産性の高い低いに関係なく、人的資源が資金関連業務を中心に貼られています。既存の仕組みは残しながら、新しい業務もつけ加えるというやりかたで、現場の行員さんの負荷は大きくなっていると思います。
地域金融機関の若手や中堅行員の離職率が高くなっているのはこういうところに根本的な原因があるのではないでしょうか。
※過去ブログで、今までの働き方を変えるための考え方を書いています。参照ください『一生(所)懸命」な働き方の終わり』。
「地域金融力」強化へ:地方銀行に求められる経営スタイルの転換
ワーキンググループの資料『地域金融力の強化に必要な方策(案)』の中で、地域経済が発展していくためには、「地域金融には中小零細企業を資金繰り支援等で支えることにとどまらず、金融事業、M&A、 DX、まちづくりへの参加と地域課題の解決に資する、地域経済に貢献する力(=地域金融力)を発揮してほしい」とのコメントがあります。
高市政権の目指す、「日本の強い経済」を実現するためには、地域経済が良くなることが必要で、そのためには地域の企業の生産性が高くなることが必要です。
高市政権が誕生して、高圧経済政策を取ることと、インフレにより金利上昇が見込まれます。金融機関をとりまくファンダメンタルズは追い風です。
※過去ブログで、経営スタイルを転換するために無形資産を活用する考え方を書いています。参照ください『キーエンスの無形資産経営を地方銀行の経営に活かす』・『地域の中に眠っている無形資産から付加価値創造する』
『顧客課題解決・地域活性化業務』を中心とする経営へのシフト
今は地域金融機関の経営スタイルを新しいステージに押し上げる、絶好のチャンスです。地方銀行が『顧客課題解決・地域活性化業務 + 資金関連業務』という経営スタイルにシフトすることができれば、地域のお客様から、新しい経営スタイルが認められて、信頼される地方銀行が各地域から出てくると思います。そうすれば、地域と地方銀行がともに発展できるようになるのではないでしょうか。
※過去ブログで、地方銀行の新しい働き方・組織運営について書いています。参照ください『プロジェクト型業務という新しい働き方』・『プロジェクト型業務で、刈り取る営業から育てる営業へのスタイル転換』。
「仏を作って魂入らず」にしないための現場変革の重要性
地域金融力強化プランのワーキンググループからは、日本の地域を良くするための枠組みや政策が出てくるはずです。せっかく未来に向けて良い政策が出てきたのに「仏を作って魂入らず」ではもったいないです。
地方銀行は「資金(資本)」とともに、「人的資源(人的資本)」を地域課題の解決に有効に使うために、現場の組織運営を『顧客課題解決・地域活性化業務』にあたる仕組みに変革してほしいと思います。
※過去ブログで、低PBRを解消する人的資本経営の考え方について書いています。こちらの記事を参照ください『地方銀行の低PBRを解消する人的資本経営の考え方』。
そして現場の行員さんたちが、活き活きと働きながら、お客様の課題を解決したり、資金を通じてお互いが成長する姿が、地域の中でたくさん見られるようになれば、その地域も地方銀行も発展していくのではないでしょうか。
このような賑やかな前向きな現場を多く作れる地方銀行が、全国各地域で生まれることが、高市政権が志す「日本の強い経済」に導くはずです。
これからの地方銀行と現場で活躍する行員さんに期待しています。
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