リクルートの人材活用を地方銀行の経営に活かす(後編)
チャレンジ精神を推奨する人事システムの構築
新しい価値を創造するためには、従来の保守的な組織体制ではうまく回らないと思います。新しい価値を創造するためには組織が自由闊達で、人材の流動性が高い人事システムに変えていくことが必要です。行員のチャレンジ精神を推奨するような人事システムに変えていかなければいけないと思います。
このチャレンジ精神は、積極的に資格を取れとか、自己啓発として新しいことを勉強しようということではなく、新たなものを生み出すことを組織として推し進めることです。
与信(融資)業務は大切
ここで銀行が従来の中核業務である与信(融資)業務を、積極的に自由闊達にやれということではありません。与信業務は大切なお客様の預金を使って、融資をしているので貸し倒れを引き起こしてはいけません。与信業務に関しては従来通りきっちり行わなければいけません。
新しい付加価値を創造する業務については、与信業務とは切り離して行えば良いのです。
リクルートの人材活用を参考にして新しい仕組みを作る
新しい付加価値創造を行う業務を試みるときに参考になるのが、リクルートの人材活用だと思います。リクルートの社風として新しいことにチャレンジすることを推奨する企業文化があると思います。
リクルートは優秀な起業家を、世の中に数多く輩出している会社です。取り扱っている商材は、ホットペッパーやインディード等に代表される、WEB技術を使った特徴あるサービスを提供されています。自社の優秀な社員が無形資産を使って新しいサービスを開発しています。リクルートで新しいサービスを開発した社員さんたちが、独立して新たな会社を立ち上げるのだと思います。
リクルートの創業者の江副浩正氏の人材採用
リクルートの創業者の江副浩正氏は「人を採れ、優秀な人材を採れ、事業は後からついてくる」という姿勢で人材採用を行なっていました。良い人材を集めて新しい事業を立ち上げながら、社内で人材が成長していく仕組みができているのだと思います。
このような人材の採用スタイルと人材育成の仕組みがあることで、リクルート出身の起業家や経営者が世の中に多く存在している理由にもなっているのだと思います。
地方銀行にもリクルートのように優秀な人材が集まってきて、地域の中で新しい仕組みを作り出したり、その仕組みを作る人材を育成していくことが必要ではないでしょうか。
新たな付加価値創造を行うための人材育成と企業文化
地域の付加価値創造を行うためには、人材と顧客ネットワークが必要になります。地方銀行の顧客ネットワークは既に地域の中に張り巡らされています。人材の活用方法が重要になってきます。
付加価値創造活動を行う上で、一番重要なことは地方銀行の保守的でミスを許さない文化や風土を変えていく必要があると思います。これからも与信業務だけで経営をしていくというのであれば、現在の保守的な企業文化でも良いと思います。
しかし今のままでは地域も地域に存続基盤を持っている地方銀行自体も、経済の縮小とともに衰退していくのではないでしょうか。
地域の新しい付加価値を作って、地域と共に成長していくというモデルを作る必要性があると思います。
リクルートでは優秀な人材を獲得して、新しい仕事にチャレンジさせることで人材育成を図っています。いきなりリクルートのような人材活用するというのは無理だとは思います。しかし地方銀行も発想を変えて、自由闊達で流動性が高い人材活用システムを作っていかないと、これからの社会の中では生き残れないのではないでしょうか。
人材を組織の外部に送りだす発想
地方銀行自体が職員を抱え込むという発想ではなく、銀行の外に人材を派遣して地域の人たちと一緒に、新しい付加価値を創造していくという発想が必要だと思います。
新しい価値が生まれる場所は、組織と外部の境界線であったり、組織の外部にあると思います。今までにはない新しい価値を作るためには、人材を外に出して新しい価値を作っていくという考え方を自社内で持つし、お客様に対しても表明して、実際に一緒に活動していくことが重要です。
地域を挙げて新しい付加価値創造活動を行うという発想をもてば良いのです。組織の殻にこもっていたのでは何も起こりません。何か新しいことが起こるのは組織の周辺部や外部なのです。その発想を持てば、地方銀行は地域の中でネットワークを既に持ち合わせているので、いくらでも新しい付加価値創造活動ができるはずなのです。
チャレンジ精神を推奨する企業文化を作る
新しい付加価値創造活動をしていると地方銀行の中の人材が活性化して、チャレンジ精神が旺盛な職員が出てくると思います。このような状況は内部的にも非常に良い傾向ですし、地域の人たちから見たときもありがたい、頼もしい存在になるはずです。
付加価値創造活動に伴って、人材育成が「正の循環」に入り自社内でも良い影響が出るし、お客様から見たときの地方銀行の信頼度も上がりブランド力がつくのです。
人材が活性化した組織の中からは、新たに組織の外で起業したいという若い子たちも出てくるはずです。そのような若い子たちを組織の中に留めるのではなく、外に出てどんどん起業を推奨するような開けた組織にしていけば、銀行を中心にした地域の人材供給システムと、地域ネットワークがより濃密に広がっていくのではないでしょうか。
現状の保守的な組織のままでは、人材の活用が上手くいっておらずもったいない状態になっており、誰も得をしません。これを打破するためには、リクルートのようにチャレンジ精神を推奨する人材活用の仕組みを導入していくことが必要ではないでしょうか。