リクルートの人材活用を地方銀行の経営に活かす(前編)
日本の出生数から見る労働市場の変化
《日本の年間出生数推移》
1974年 203万人
1984年 149万人(10年前比▲54万人)
1994年 123万人(10年前比▲26万人)
2004年 111万人(10年前比▲12万人)
2014年 100万人(10年前比▲11万人)
2024年 72万人(10年前比▲28万人)
2025年 69万人(予想)
日本の出生数は右肩さがりで減少しており、労働力人口の減少はさけられない現実があります。
出生数が減少している理由は様々な要因が考えられますが、この減少トレンドは変えられないと思います。働く人の数が必ず減るという前提のもとに社会や会社組織の仕組みも変えていかないと、運営が難しくなってくるのはあきらかです。
20年後の人材は現在の半分
現在、組織の中で働き盛りの人たちは、1984年生まれの40歳から、1994年生まれの30歳までの間の人たちで、組織で中核で働かれています。
そして昨年の2024年生まれの子供たちの人数は、彼らが社会に出てくる約20年後には、今組織で中核で働いている人たちの約半分しかいないのです。
20年前、30年前の半分しか子供が生まれていないということは、将来は今の仕組みのままでは、とても回らない状況になるのは明らかです。
高度成長期時代の経済が伸びて資金需要が旺盛なときには、システムさえ構築し、あとは営業で頑張るといった、人海戦術で経営が成り立っていました。しかし人口が減って新たな需要が大きく望めない中では、今の経営方法ではとても継続的な運営が望めないのではないでしょうか。
県境またぎの経営統合が起こる地方銀行
そのような危機感から各地域の地方銀行も県境をまたいだ、経営統合が起こってきているのだと思います。しかしこの経営統合に関しても根本的な解決にはなっていないと思います。あくまでも地方銀行の財務面の健全化をするために固定費を削減するという目的で進められているのだと思います。
一方地域の現場に目を向けてみると、人口減少に伴う需要の減退と、働く人の数の減少という二重の制約によって、今までのような発想で地方銀行の運営をしていたのでは、疲弊する地方経済を維持していくということはできないのではないでしょうか。
そして地域経済が衰退してしまうと、その地域に基盤をおいている地方銀行の経営基盤である地域もなくなってしまい、地方銀行自体もなくなってしまうということになるのです。
存続基盤の地域の活性化が重要
県境をまたいだ経営統合をして一時的に財務面の健全化が図れたとしても、地元の地域経済が縮小していけば、また収益を補えるだけの経営益盤がなくなり、近隣の地方銀行グループ同士で経営統合するという理論になってしまい、根本的な解決にはならないと思います。
重要なことは自社の地域経済基盤である地元をいかに活性化し、自社の経営と地域を活性化する方向性をすり合わせて、地域と一緒になっていかに成長していくかということが大切なのだと思います。簡単に地域経済を活性化するとか、成長さすということは簡単なことではありません。表面的に地域活性化を標榜するだけでは地域が良くなるということはないと思います。
地域が活性化するということは、その地域に新しい産業が生まれたり、起業家が多く集まってきて、新しい付加価値が生まれたり、その地域に人が多く集まって、地域の消費が拡大するという、新しい需要が地域の中でエコシステムとして生まれてくるような仕組みを作らないといけないと思います。
単に補助金をばらまくとか、経営理念で地域活性化をうたうというだけでは、とてもできるようなことではないのです。地方銀行は地域基盤がなくなれば、自社の存在意義自体もなくなるという危機感をきちんと持ち、改めて地域経済の活性化にコミットしていく姿勢が必要だと思います。地域に新たな価値を創造していくということが重要なのです。
みずからが地域活性化の主体となる
今までの何かの課題を解決したからお金(手数料)をくださいという発想ではなく、自らが新しい付加価値の創造主体(もしくは創造主体のサポーター)として、地域に関わっていくことが重要になってくると思います。
地方銀行の使命(ミッション)に地域活性化を含める
将来の地方銀行の使命は、地域に安定的に資金を供給していくということでした。しかし現在は地域経済が将来的に縮小し、新たな需要が見込みにくい状況です。そのような中で新しい発想が必要だと思います。必要な発想として、地域に対して新しい価値を地域と一緒に創造していくことが地方銀行の使命(ミッション)である、ということにすれば、地域から求められることと、地方銀行の経営の方向性が合致すると思うのです。
後編でリクルートの人材活用方法を参考にしながら、地方銀行が行うべき地域活性化人材の育成について考えたいと思います。