業績の悪い会社が地方銀行のブランド(信用)を強化する
業績の悪い会社こそサポートする
業績が悪くなった会社に対して、地方銀行は冷たくあしらう場合があると思います。でも業績が悪くなった会社こそ、本来はいろいろなサポートをしてあげるべきではないでしょうか。
大多数のお客様は真面目に活動されています。しかし経営環境の変化や判断ミスで、窮地に陥ることがあります。これは人間も同じことで、些細なことで窮地に陥る事はよくあることだと思います。みなさんも困った人がいたら、手を差し伸べると思います。会社であっても人を助ける場合と同じことではないでしょうか。
銀行は金融を背景に力を持っている
銀行は金融(融資)の形で、お客様の命運を握っていて、お客様に対して強い立場にいます。その立場を前面に出して、弱いものに強く出たり、強いものに卑屈になる場面を、私は銀行勤務時代に見てきました。
融資という強い力をもとに、地域の弱い人たちに対して手を差し伸べてあげる地方銀行が本当に信頼される銀行ではないかと思うのです。
業績の悪い取引先というのはどうしても「貧すれば鈍す」で、資金繰りや目先の緊急事態に対応することに必死になって、困難から脱出するための施策が打ちにくくなって、業績回復に向けたアイデアを考えられない状況にあります。その状況をまずは理解してサポートしてあげないと、お客様は浮かび上がって来れないと思うのです。
一方的に銀行からまくし立てられて見放されるようなことを言われると、お客様もやる気をなくして倒産したり、廃業したりということになる可能性があると思います。その時に残るのは、その銀行に対する悪いイメージだと思います。
冷たい対応しても今は大丈夫だが・・・
銀行は資金力と信用力があるので、一企業や一人の人間から悪く思われても、すぐに困ったことにはならないと思います。しかし、このような一人一人、一社一社の銀行に対する悪い印象が、長い目で見たときに地域内で広がり、その銀行の評価につながり、将来的なブランド価値(信用力)の棄損を招き、銀行自体の経営が知らない間に悪くなるということが起こる気がします。
困っている会社の良い所を見つける
逆に業績不振に陥った会社や困っている人たちを、前向きで建設的なサポートをしてあげれると、そこで持ち堪えて数年経つと事業改善したり、事業が大きくなったりということが大いにあるのです。
会社の放漫経営を許す事はできませんが、本当に困っているお客様の業績を回復するために、手をさし伸べてあげる姿勢があれば、将来その会社や人からいろいろな形で恩返しがあると思うのです。
仮にその会社が倒産したとしても最善のサポートをしてあげれば、地域の中で銀行に対してなんだかの形で返ってくるものはあるのではないでしょうか。
弱い者を助けることがブランド(信用)になる
このような困っている会社や、困っている人に対するサポートをする姿勢の積み重ねが、いざとなったら助けてくれるという信頼につながり、その地方銀行のブランド(信用)につながって、地域と銀行が一緒になって発展をしていく、本当の地方銀行のあるべき姿になるのではないでしょうか。
会社を再建することはやりがいがある
私は銀行勤務時代に業績の悪い会社を立て直すことにやりがいを感じていました。会社を立て直すことには非常に時間がかかりますが、その会社の良いところをきちんと理解して、悪いところを改善して良いところを伸ばす施策を打てば、時間はかかっても必ず業績が回復できると思っております。
業績の悪い会社の、良い所を見つけることろが何かないかをいつも探しておりました。会社の長所(良い所)とは。
例えば、技術力がある、良い商材を持っている、ということもあるのですが、社長の人柄が良いとか、会社の歴史があるとか、創業のきっかけが凄いとか、何でも特徴的なことであれば良いと思うのです。
その会社の長所で共感できるものがあれば、業績回復して生き残る可能性があると思います。
会社の長所に共感できれば再建できる
お客様は自分達の良いところも悪いところも分析できずに、なすすべなく目の前の仕事に忙殺されて時間をすごしているケースが多いです。
銀行員はどうしても業績が悪くなった会社に対しては、債権の保全だったり、資金の回収ということが重要になるので、お客様に対してあたりが厳しくなり、口調が強くなったり、批判的な態度になりがちです。
当然銀行員の仕事に対する姿勢としては、そうなってもやむを得ないところもあると思います。しかし中小企業や個人はもともと弱者です。資金の力を持っている金融機関から、突き放すような言い方や態度で接せられると、前向きな感覚になれずに業績回復に向けて気持ちが後ろ向きになってしまうケースもあると思います。
ダメな会社をすべて潰して良いのか?
ダメな会社をなくしてしまうという、経済合理的な考え方もあるとは思います。しかし、現在の人材不足の問題と一緒で、会社をなくしてしまうと、そこで働いている人達の職場や、取引先の関係性もなくなってしまい、地域経済にとって損失になると思うのです。
なので債権回収という大前提はあるものの、債権回収と地域経済の維持を図るためにも、その会社の良いところをきちんと判断して、会社の良い資源を残していくということをして欲しいのです。
企業再建業務は地方銀行経営の根幹
業績回復には時間がかかると思いますが、その会社にとって良いところがあるのであれば、その部分を伸ばすということをして欲しいのです。そうすればその会社単独でなくても、事業支援やM&Aや事業買収という形で、その会社が残した経営資源を社会に残すことが可能なのです。そういう目線を地域金融機関の皆様には持って欲しいと思います。
業績の悪い会社を再建することは、地方銀行経営の根幹になっていると思います。