地方銀行での複利的ネットワーク(人脈)形成術 

2025年09月28日

銀行員の方はお金の複利効果の力をご存知だと思います。利息が利息を生み資産が加速度的に増加するというものです。私はこの考え方が人脈形成にも当てはまると思っています。これからは人脈形成においても複利効果を意識することが大切なのではないかと考えています。

AI時代には人とつながることが重要になる

AI やDXが進んでいく社会では、AIやシステムに任せられるところはAIに任せて、人間にしかできないことをしていくという流れが出てきていると思います。その時に必要なのは人と人とのつながりです。人と人が会って直接話すという物理的な作業はAIではできません。

人には感情があります。目の前の人に会って初めてこの人が「良い人である」とか「感じの良い人だ」とか「気の合う人」という感情が芽生えてきます。人と人が会って感情が起こり、意気投合して新しいことが起こってくるのです。AIとDXが発達してくると、ますます人と会えることに価値が見出されてくるのではないでしょうか。

AI時代には「感じの良い人」が生き残る

これからは人によって「感じの良い人」、「頼りになる人」ということを相手に思ってもらうことがますます重要になってきます。そして「感じの良い人」、「頼りになる人」というブランドができれば、他の銀行員とは差別化されて、お客様の悩みごとの相談や、プロジェクトへの参加の要請が集まってきます。

信頼度の高い人ほどより情報や人が集まってくる傾向が強くなるということです。ネットワーク理論でいうと、個人(行員)がハブの役割となり、この人に相談すれば解決してくれる協力してくれるという信頼(ブランド)になって、ますます人が集まってくるのです。

AI時代は人脈を持つ人(人と人とのつながりが広い人)と無い人では、人生が変わってくるのではないでしょうか。

お客様がお客様を連れてくる紹介の連鎖

私も銀行時代に経験したのですが、お客様がお客様を紹介してくれることで営業ができていました。ある1人のお客様や企業を損得勘定抜きに親身にサポートしたり、感謝される仕事ができると、そのお客様の周りにも同様の悩みを抱えている、友人や企業、取引先がいて、最初にサポートした人から連鎖的に紹介してもらうということが起こるのです。新しいお客様を自動的に紹介してくれるわけです。

お客様の悩みや課題を媒介にして、人が人を紹介してくれる人脈の複利効果が働いてくるのだと思います。そうすると「お客様の課題を解決してくれる行員さん」という評価(ブランド)ができて、次々に新しいお客様と出会える可能性が高まります。

お客様がお客様を紹介してくれだすと人脈(ネットワーク)が複利的に増えて、自分自身をハブにして、人脈(ネットワーク)がどんどん広がります。そうすると地方銀行の仕事をしながら、自分自身の人的ネットワークを築けるわけです。地方銀行員の役得だと思います。

複利効果が人脈(ネットワーク)形成にもあてはまる

銀行員は複利効果のパワーをよく知っていると思います。利息が利息を生んで時間が経つにつれて、資産が加速度的に増加していくという仕組みです。最初はなかなかお金は増えませんが、お金が溜まってくると、溜まったお金がどんどん利息や収益を生み、最終的には加速度的にお金が増えていくという仕組みです。

私はこのお金の複利効果の考え方が、人脈にも当てはまっていると思います。銀行員として駆け出しの頃は、付き合う人は一支店のお客様に限れていますが、時間が経つにつれ、転勤を重ねて付き合うお客様の数が増えれば、そのお客様から新しいお客様を紹介してくれる数が増えるという複利の力が効いてきて、人脈ネットワークが広がっていくのです。

地方銀行の仕事を仕事として割り切るのはもったいない

銀行員の中には、仕事と割り切って一つの支店のお客様と付き合うのは、その支店の在籍期間だけと割り切っている行員さんも多いと思います。しかしこれからのAI時代では、人との付き合いがますます重要になってくる社会ではもったいないことです。特に地方銀行員は、地域の人たちから信頼を受けています。役得だと割り切って、自分自身の人脈形成に大いに活かすべきではないでしょうか。

人脈形成を意識して活動(仕事)をしていけば、10年も経てば立派な人脈となる財産が形成されているはずです。これからAIが発達する中では、人脈がマネタイズ(ビジネスや仕事)をするきっかけを与えてくれる大きな資産になってくると思います。会社組織に居続けるにせよ、いずれ会社を辞めて独立を考えている人にせよ、人脈力が重要になってきます。

不確実な社会では人脈が新しいことをするきっかけとなる

現在は変化の激しい不確実な社会が到来しています。不確実な社会では、その時その時の変化に応じて柔軟で最適な動きをしていかなければいけません。1つの考え方に凝り固まって、ワンパターンな働き方をしていたのでは、会社も個人も生き残るのは難しいと思います。

自分自身が人脈を作れていると人脈(ネットワーク)の中には、新しいことを考えているお客様や、新しい悩みを抱えている人が山ほどいるわけです。この多くの人たちと有機的につながっていくということが重要な社会になってきたのだと思います。

人脈(ネットワーク)はお金よりも重要

私自身も地方銀行を1年前に辞めましたが、銀行員時代の人脈が今もつながっていていろいろな相談を受けたり、これから企画をしたいことを遠慮なく相談したりということが自由にできています。今まで築いてきた人脈から新しいビジネスが生まれてくることは十分にあると思っています。

地方銀行員は人脈(ネットワーク)を作るということに関しては、有利な立場にいます。皆さんの人生をより良くするためにも、地方銀行の仕事の中で人脈作りを意識的にするべきではないでしょうか。

そして不確実な社会が進む中では、人脈がお金よりも重要な資産になると思います。人脈は他の資産よりも、重要な無形資産になる可能性があります。

地方銀行の経営に行員の人脈を活かす

今までは地方銀行で働く個人としての立場で、銀行での人脈形成の意義を考えてきましたが、銀行の組織としても、行員が人脈形成をすることに対して、もっと評価する仕組みを作るべきではないでしょうか。

地方銀行は現場にいる行員さんとお客様の関係性によって経営が成り立っています。人脈形成がうまくいっている行員が、組織の中に多くいればいるほど、その銀行は地域の中で信頼される社員を抱えているということになります。

人脈のある信頼されている行員が多いという事は、地方銀行として地域の人から信頼度も厚いといえます。これが本当の地方銀行の無形資産のパワーになるはずです。

行員さんの人脈形成を評価する仕組みであったり、企業文化であったり、人脈をより一層活用する仕掛けを組織の中に作っていくべきではないでしょうか。


AI時代に入り、これからどういう経営をしたら良いか分からない気もしますが、実は地方銀行が昔からしている、地域の人たちとつながっていくという原点に変えることが、一番重要な戦略になる気がします。

★著書:「地方銀行ノマド ~地域ネットワーク×WEBマーケティング~」  藤堂敏明