インフレ時代は社会が大きく変わる時代
インフレが継続する社会
現在の日本は金利がつく世界になり、今後はインフレが継続する社会になると思います。インフレの時代には既存の社会システムが大きく変わる可能性があります。逆に考えると社会が大きく変わり、最適化を図るために社会資源の再配分が起こる中で、インフレが起こるのかもしれません。
コロナ禍以降、世界的な仕事に対する意識変化や、ウクライナ・ロシア戦争の影響による資源価格の高騰、日本の円安傾向の影響により、日本はインフレ状態にあります。今後もこの傾向は続くのではないでしょうか。
インフレは貨幣の価値が下がって、物の価値が上がる社会現象です。価値のある現物資産は価格が上がり、相対的にお金の価値が下がるということです。
消費者の生活に影響を与えるインフレ
消費者の目線でいうと、同じ物を買う場合で、昔は100円で買えていたものが今は値上がりして150円を払わないと買えないということです。
身近なところでは、10年前には一軒家を建てるのに3000万円で建築できていたものが、資材価格の値上がりや人件費の高騰で、現在では4500万円もする(1.5倍)といったことが、分かりやすい例ではないでしょうか。
消費者のもらう給料が10年前から1.5倍になっていなければ、相対的に建築費の負担が増大して、マイホームが建てられないとういう人もいらっしゃると思います。給料の上昇が伴わないインフレは消費者にとっては困った事態になり、市民の生活に悪影響が出るのです。
インフレは社会変革が起こる時代
社会の変化の観点からは動きの激しい時代といえます。人間に例えると風邪の時に体の中に入ってきたウィルスを、身体が正常に戻そうとして自己免疫力で、身体の体温を上げてウィルスをやっつけて、平常な体温に下げて健康な身体に戻すのと同じような作用だと思います。
現実の社会の中では、従来あった古い価値観や時代遅れになった仕組みが淘汰されて、新しい今の時代にあった価値観や考え方、仕組みが生まれてくると思うのです。
具体的な例でいうとコロナ禍で実施されたゼロゼロ融資を受けていた企業や借入金の多い企業が、インフレに伴う金利上昇で、金利や返済負担に耐えられなくなり、倒産や廃業、もしくは成長性の望める事業のみを残して、後を損切りするといったことが起きます。
より大きい視点で見ますと、トランプ関税や地域戦争による新しい社会秩序の構築や、日本国内においては生産年齢人口の減少等の問題により、新しい仕組みへのシフトが始まり出していると思います。これから企業倒産や廃業、M&A、グループ企業内の統合等の効率化の波が起こってくるのだと思います。
インフレ時代は新しい価値観や仕組みが出てくる
これからの持続的なインフレが続くなかでは、経済の新陳代謝が活発化して、新しい価値観が生まれてくるのではないでしょうか。デフレ下では従来見えていなかった不効率な仕組みが、高金利の影響で顕在化してきて耐えられなくなり、淘汰されていく可能性があるのです。従来の仕組みでは組織が回せなくなるので、新しい仕組みや価値観が生まれてくると思うのです。
この価値観や社会の変化が起こる中で、現場のお客様も新しい仕組みに適合しようとして、困り事が起こってくるはずです。地方銀行は地域の現場に顧客のネットワークを多く持っていて、お客様の困り事である課題に直面します。その困り事を解決していくサポートの中に、新しい仕組みや考え方が生まれてくるのではないでしょうか。
インフレ時代の働き方
銀行員の立場としても、新しい仕組み化への対応に現場で立ち会えます。銀行から与えられた仕事だけをするのではなく、お客様の困りごとを解決するサポートを通じて、お客様と一緒に新しい仕組みを作っていくという感覚で仕事をしていると、自分の将来のキャリアにも必ず役立ってくると思います。
インフレは古い時代の合わないものが無くなり、新しい仕組みが生まれる新陳代謝が起こる時代です。新陳代謝が起こる時代は、経済として活発になってくる時代です。デフレの時代はお金を持っているものが勝つ世界でしたが、インフレの時代は新しいものにチャレンジして、新たなものを生み出そうと活発に動いている人が強みを発揮する時代です。
銀行の内部でも、従来のやり方を変えずに、だらだらと古い仕組みを維持したり、意味のない会議が定期的に開催されたり、上司が上に報告するためのレポート作成に時間をついやして時間をとられたり、といった仕事の仕方では時代に取り残されてしまいます。
インフレは地方銀行にとってチャンス
一方で、地方銀行の現場では、地域の中に顧客ネットワークが多くあり、地域資源を持ったお客さんが沢山います。ここにアプローチするチャンスが多くあります。既存の仕組みの中に閉じこもって、従来の仕組みを維持するだけではジリ貧になっていくのではないでしょうか。
新しい発想で地域のネットワークの中に飛び込んで、地域の中に新しい価値を創り、お客様の新しい事業を起こすサポートをしたり、お客様と一緒に事業を創ることをしていくことが大切です。
地方銀行の組織も大きいので変わるのは大変です。しかし地方銀行は地域にお客様を多く持って、地域の面白い人や面白いビジネスに接するチャンスが多くあります。日々の仕事の中で目の前にいるお客様を、銀行の取引先だけと考えるか、自分自身の将来の可能性を高めたり、まだ分かっていない潜在的な価値を引き出してくれるのではないか、という心持ちで仕事をするのでは将来の自分自身の成長に大きな差が出てくると思います。
インフレは時代が大きく変わる時であり、自分自身を成長させてくれるチャンスが多くあると思いますので、現場で前向きなチャレンジをして欲しいと思います。