地方銀行の最強の無形資産:地域ネットワークを活かした「人的資本経営」と収益化戦略

2025年07月26日

旧態依然とした仕組みからの脱却 

2023年以降、上場企業に義務付けられた人的資本経営。人材を資源から投資対象へと切り替えるこの新しい潮流は、地方銀行においても喫緊の課題です。

しかし、多くの組織では、いまだに旧態依然としたノルマ型の営業や、既存の仕事の枠組みが残っていないでしょうか。AIの発達により貸出や証券業務の事務負担が50%も削減される可能性が指摘される今、従来の「競争を煽り、へりくだってセールスする」仕組みは、確実に限界を迎えます。

人口が減り、優秀な人材が希少化する中で、地方銀行が生き残り、低迷するPBRを解消するための鍵は、組織の外側、つまり**地域の中に既に築き上げている「ネットワーク」**にあります。

地方銀行が持つ最強の武器:地域ネットワークの価値

従来の収益源である貸出・証券売買手数料の獲得という発想から、お客様との間で新しい価値を創造する**「価値創造活動」への転換が求められています。この発想の転換を支えるのが、地方銀行の無形資産、すなわち「地域ネットワーク(社会関係資本)」**です。

融資業務を通して地域のお客様と築いてきた強いつながりと信用こそが、地方銀行最大の優位性です。この「地域ネットワーク」を活かす仕組みづくりこそが、人的資本経営を機能させるための核心となります。

※地域ネットワークの活用の仕方を過去ブログ『強力な地域ネットワークを活用する』で詳しく解説しています。ご参照ください。

※著書『地方銀行ノマド~地域ネットワーク×WEBマーケティング~』の、第三章「地域金融機関の課題解決に地域ネットワークを活用する」でも解説しています。

外部が評価する「地域ネットワーク」の破壊力

なぜ、地方銀行は自社の地域ネットワークの価値に気づきにくいのでしょうか。そのヒントは、外部からの熱烈なオファーにあります。

今、地方銀行の「地域ネットワーク」を最も強く意識し、その活用を求めているのは外部の事業者です。ビジネスマッチングという形で、取引先の紹介や案件紹介の依頼が地方銀行には無数に入り込んでいます。事業者さんが多額の手数料を払ってでも契約を結びたいのは、自分たちだけでは繋がれないお客様に対し、地方銀行の持つ**強固な「地域ネットワーク」**を通じてアクセスしたいからです。

外部事業者はこのネットワークを「収益を生む資本」として認識しています。この事実は、地方銀行が持つ地域ネットワークの価値と収益性のポテンシャルを何よりも雄弁に物語っています。

【地方銀行×ネットワーク】発想の転換による高収益化

外部からのビジネスマッチング手数料だけに頼っていては、もったいないことです。

地方銀行自身が、この強力な「地域ネットワーク」を能動的に活用するという発想に切り替えるべきです。地域の中には、人手不足、後継者問題、DX推進の遅れなど、解決すべき課題が山積しています。

この課題に対し、銀行がネットワークのハブとなり、お客様同士、あるいは外部のソリューションを持つパートナーを繋ぎ、能動的に課題解決の動きや提案を作っていく。この価値創造活動こそを仕事にすることで、地域にとって大切な付加価値が生まれ、同時に銀行の収益性も高まるのです。

AIによって削減された時間を人件費削減で終わらせるのではなく、「地域ネットワーク」を活用した新しい高収益な仕事を生み出すことに投資する。これが、地域活性化と地方銀行経営に大きなインパクトを与える、未来志向の経営です。

※地方銀行の低収益体質からの脱却の必要性を過去のブログ『地方銀行の低PBR(株価純資産倍率)を改善する処方箋』で解説しています。ご参照ください。

ネットワークを収益に変える「人」の力

そして、この「地域ネットワーク」を現場でつないでいるのは、地方銀行の現場の行員です。

現場の行員が地域の中で**「課題解決のハブ」となって活躍し、付加価値を創造する活動をエコシステムとして仕組み化**することが重要です。

  • 課題解決が仕事になる  →  地域のお客様から感謝され、信頼を得る。

  • 信頼を得る       →  行員自身が成長し、モチベーションが向上する。

  • モチベーション向上   →  現場が前向きで明るくなり、創造性が高まる。

  • ブランド力向上     →  貸出や保険・証券獲得が自然に増える。

この**やりがいを生む「正の循環」**こそが、低PBRを解消し、真の人的資本経営を達成する道筋です。

※現場のやりがいとはどういうものかを過去のブログ『【地方銀行の仕事のやりがい】地域経済を動かす醍醐味と人間的成長の秘訣 』で解説しています。ご参照ください。

地方銀行には、既に「地域ネットワーク」があり、それを繋ぐ優秀な現場の行員がいます。発想を転換し、この社会的関係資本を最大限に活用することで、行員さんのため、地域のため、そして組織のためになる、新しい仕組み作りに是非チャレンジしてほしいと思います。

※新しい仕組み作りの仕方について過去ブログ『プロジェクト型業務で、刈り取る営業から育てる営業へのスタイル転換』『 プロジェクト型業務という新しい働き方』


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★著書:「地方銀行ノマド ~地域ネットワーク×WEBマーケティング~」  藤堂敏明