【地域課題解決】耕作放棄地から始める「地方銀行ノマド」式フィールドワーク / 香川県のブランド米「おいでまい」と飲食店をつなぐ、地域循環プロジェクト

2026年03月07日

「なぜ元銀行員が米を作るのか? それは、金流(カネ)だけでなく商流(モノ)と人流(ヒト)を直接つなぐことが、今の地域金融に最も欠けているピースだからだ」

1.耕作放棄地と飲食店をつなぐ「おいでまい」プロジェクト

今回、私が新しくチャレンジするのは、耕作放棄地となっていた田んぼを活用し、香川県のブランド米「おいでまい」を栽培して、地域の飲食店さんに直接お届けするプロジェクトです。

地域の農業では、担い手不足や高齢化により、田んぼが耕されないまま放置される「耕作放棄地」が年々増えています。


一方で、飲食店さんからは「地元で育ったおいしいお米を、お客さまに出したいのに、安定して仕入れられない」という声を多く聞いてきました。

この「つながっていない二つのニーズ」を結びつけるために、

  • 私自身が耕作放棄地を借り受けて「おいでまい」を栽培し
  • そのお米を、地域の飲食店さんへ直接販売する

という、小さくても実践的なフィールドワークを4月からスタートさせます。

※あわせて読みたい: 今回のフィールドワークの背景にある、地域金融の構造改革について。現場の人的資本をどう再構築し、地域経済の課題をいかに収益に繋げるべきか。金融庁も注視する「地域金融力強化プラン」を成功させるための前提条件をまとめています。【地方銀行の未来】地域金融力強化プラン成功の鍵

2.香川県のブランド米「おいでまい」のポテンシャル

「おいでまい」は、2013年に本格デビューした香川県オリジナルのブランド米で、その名前には讃岐弁で「いらっしゃい(おいでませ)」という意味が込められています。
「香川で生まれたお米を、ぜひ多くの人に食べに来てほしい」というメッセージそのものが、すでに地域ブランドとしてのストーリーになっています。

特徴としては、

  • コシヒカリに匹敵する粘りと、しっかりとした粒感
  • 冷めても甘みや食感が損なわれにくく、お弁当やおにぎりにも向いている
  • あっさりしてクセが少ないため、和食・寿司・丼もの・チャーハン・カレーなど、幅広い料理と相性が良い

という強みがあります。

「主張しすぎず、料理を引き立てるお米」という性質は、まさに飲食店さんが求める「万能選手」のような存在です。


このポテンシャルを、もっと地域の中で活かしたい。そこに今回の企画の原点があります。

3.父から受け継いだつながりが、耕作放棄地をフィールドに変えた

私の実家は、小規模ながらも米作をしていました。
数年前に父が亡くなってからは、地域の稲作の灌漑機能を維持するための、ため池の草刈りや用水路の掃除など、農業インフラを支える共同作業に、私自身が変わらず参加し続けてきました。

そうした地域農業を支える方々との地道なつながりを維持していたことで、今回、耕作放棄地となっていた田んぼを貸していただけることになりました。

同時に、地域の飲食店さんからは、以前から
「香川のブランド米『おいでまい』を、安定して仕入れられないか」
という相談をいただいていました。

  • 「耕作放棄地をなんとかしたい」地域側の課題
  • 「地元米を安定的に仕入れたい」飲食店側のニーズ

この二つが、父の代から続く地域の信頼関係をベースに、一本の線でつながったのが今回のプロジェクトです。

※あわせて読みたい: 「父からの信頼」という無形資産が、なぜビジネスの突破口になるのか。地銀が持つ最大の武器である「地域ネットワーク」を活用し、販路拡大や事業承継を成功させるための実践的な思考法を解説します。地方銀行が地域を救う!【信頼ネットワーク戦略】潜在顧客を掘り起こす「販路拡大サポート」が事業承継・M&A成功の鍵

4.香川・讃岐に刻まれた稲作の歴史と、水の物語

香川県・讃岐は、平安時代から稲作が行われてきた歴史のある土地です。
香川県は雨の少ない地域であり、古くから慢性的な水不足に悩まされてきました。
その中で、ため池の密度は日本一と言われ、空海が改修した日本最大級のため池「満濃池」は、今も讃岐の稲作の象徴として存在しています。

また、菅原道真が香川の地に、讃岐守(国司)として赴任していたことはよく知られていますし、丸亀市三条町や高松市六条町といった地名には、条里制の名残が今も息づいています。

しかし、こうした歴史と先人の努力に支えられてきた田んぼも、

  • 農業従事者の高齢化
  • 後継者不足
  • 人口減少

といった現実の中で、徐々に耕作放棄地へと姿を変えつつあります。

水田がその役割を失えば、

  • 美しかった水田の景観が失われる
  • 害虫や雑草が周辺の農地へ悪影響を及ぼす
  • 地域全体の農業インフラ維持が難しくなる

といった問題が、時間差でじわじわと表面化してきます。


耕作放棄地を減らすことは、単なる「田んぼの再活用」ではなく、地域の景観と農業インフラ、そして日本全体の食料安全保障にも関わるテーマだと感じています。

※あわせて読みたい: 景観や歴史、地名に隠された「地域の記憶」は、立派な経営資源です。耕作放棄地をを、価値を生むフィールドへと変える「無形資産の可視化」プロセスについて深掘りした記事はこちら。地域の中に眠っている無形資産から付加価値創造する

5.観光地・香川の飲食店が抱える「地元食材の仕入れ」というリアルな悩み

一方で、香川県内の飲食店を取り巻く環境は、確実に変わりつつあります。

  • 3年に一度の瀬戸内国際芸術祭
  • 直島や豊島を中心としたアートツーリズム
  • 2027年夏、高松港周辺に予定されている外資系ホテル「マンダリンオリエンタル」の開業
  • 高松駅・高松港周辺の再開発

こうした動きにより、香川県を訪れる外国人観光客や県外からの旅行者は、今後さらに増えていくことが見込まれます。

飲食店さんの本音としては、
「せっかく香川まで来てくれたお客さまには、香川で育ったお米や野菜、海の幸を味わってほしい」
という強い思いがあります。

しかし現場では、

  • 香川県産の食材を安定して仕入れる流通ルートがない
  • 中小規模の飲食店が、個別に農家さんとつながるのは難しい
  • ブランド米「おいでまい」を使いたくても、安定供給がネック

という課題に直面していました。

今回のプロジェクトは、

  • 「おいでまい」を栽培する立場(私)
  • 地元食材を使いたい飲食店さん
  • 耕作放棄地を抱える地域

この三者をつなぐことで、
「観光客に、香川の米を香川で味わってもらう」ための、新しい小さなインフラづくりでもあります。

※あわせて読みたい: インバウンド需要が高まる今、必要なのは「美味しい」を「価値」に変換する力です。地域金融機関が持つべき「言語化」のスキルが、いかに地域の商流をデザインし、企画を形にするのかを論じています。言語化と企画力が地域金融機関の強みになる

6.「おいでまい」から始まる、地域金融とフィールドワークの次の一歩

地方銀行で30年間働き、今は「地方銀行ノマド」として地域の無形資産を可視化し、価値に変える活動を続けています。


その中でいつも感じるのは、「地域の中に埋もれている資源は、人・土地・歴史・ブランドとして、すでに揃っている」ということです。

今回の「おいでまい」プロジェクトは、まさにその象徴です。

  • 父の代から続く地域との信頼関係(人的ネットワーク)
  • 歴史のある田んぼというフィールド(土地資源)
  • 香川県オリジナルブランド米「おいでまい」(地域ブランド)
  • 観光需要の高まりと、地元食材を使いたい飲食店のニーズ(市場)

これらを一本のストーリーとしてつなぎ直すことで、耕作放棄地の解消と、飲食店の仕入れ課題の解消を同時に目指していきます。

今後は、

  • 実際の栽培の様子
  • 飲食店さんのメニューへの採用事例
  • 観光客の方やインバウンドの反応
  • 子どもたちへの「金融教育×起業家精神」の展開

といった「フィールドワークの記録」も、このブログやXで随時発信していく予定です。


【著書のご案内】

『地方銀行ノマド ~WEBマーケティング×地域ネットワーク~』 (藤堂 敏明 著)

本記事で紹介した「耕作放棄地×ブランド米」の事例のように、地方銀行の現場には、地域を再生させるための「火種」が無数に存在します。

銀行員が組織の枠を超え、WEBマーケティングの視点とリアルの地域ネットワークを掛け合わせることで、いかにして新しい働き方と地域経済の循環を創り出せるのか。私が現場での危機感から辿り着いた、地方銀行のポテンシャルを最大化させるための処方箋をこの一冊に凝縮しました。

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